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絵本読んで!

絵本:あな

img098「あな」
作:谷川 俊太郎
絵:和田 誠
出版社:福音館書店

とりグループのお友だちと一緒に、あなを掘ってみました。

絵本には珍しい、横長の縦開きの本です。
ひろしがひたすらに穴を掘っていくお話。
おかあさんや友だちがかわるがわるやってきて、ひろしに声をかけますがひろしは気にも留めず穴を掘ることに一生懸命です。
ひろしは一体何を思いながら掘っているのだろう?と不思議に思うお話を、子どもたちはどう感じるのでしょうか。

私がこの本を読むときは、できるだけ淡々と平易に読むようにしています。
と言うのも、詩人である谷川さんのとても分かりやすい言葉、情景を必要なだけの言葉で表現されている日本語を感じて欲しいと思うのが一つ。
それと、お話の中で徐々にひろしの気持ちが変化していることを、子どもたちの気付きの中で感じられるように、それを読み方で妨げないように、という思いからです。

さて、とりグループのお友だち。
同じアングルで描かれた「あな」はその変化がとてもわかりやすく、深くなっているのも見て取れます。
でも、穴掘りの状況が変化していく中で、次々とやってくる訪問者に「またぁ」とちょっと残念な声。。。
むむむ、、、お話の芯が感じられていないのか、、、と、ちょっぴり不安になりながら読み進めました。

読み終えて聞いてみました。
『表紙の絵って何の絵?』
「あなやん」「そら!」「ちょうちょう」と色々意見が出ましたが、Kくんが
「あなから上みたんや」と。
あ、ちゃんと伝わってた。と安心しました。
『じゃあ裏表紙の絵は何やろ?』
「あな!!」「ちゃいろ!」
すると誰かが、「あなのぞいたんや」
ひろしの見た「あな」を表紙に持ってくるなんて、なんだか確信的ですが、ちゃんとひろしのあなが描かれていることが嬉しいですね。
子どもたちも気付いてくれたようです。

この絵本のひろしの気持ちってどんなものでしょうか?
ひたすらに何かを成し遂げて満足した気持ちってどんなものでしょうか?
私にも経験があります。
砂場いっぱいの山を作ってみる。満足いくまで高く。トンネルも掘る。
冷たい砂の感触、指の痛み。暑い日ざしの中、汗だくになって山を作る。
出来上がったときのなんともいえない充実した心地よさ。
みなさんにもきっとそんな経験があるはずです。

穴掘りの場面が進むたびに、ひろしがこれは自分のあなだという思いを強くしていく姿。穴の深さの分、その思いの強さを感じます。
そんな気持ちを酌みもせず、的外れなことを言う人たちの可笑しさがそこにあったりもします。
唯一、おとうさんだけがひろしの行いを認めているような言葉をかけていますね。
おそらく、おとうさんにも同じような経験があったのかもしれません。

あなの中に座り込むと、きっとひんやりと冷たい土の手触り、土のにおいが充満していたでしょう。
ぽっかりと開いたあなの中から見える切り取られた空。
その空はまちがいなく、ひろしのものになった空なのでしょうね。